文章作成や画像生成などを得意とする生成AIは、介護現場の仕事にも役立つ頼もしいツールです。
しかし、「使い方がよくわからない」「情報漏えいが心配」といった理由から導入をためらっているという声も…。
安全に使うためのポイントや使い方のコツなど、今日から使える活用術をご紹介します。
生成AIとは質問や指示を入力すると、文章を作ったりアイデアを出したりしてくれる人工知能のこと。物事を考えるための「たたき台づくり」や「相談相手」として広く活用されています。介護現場においては、介護記録や会議資料の作成、掲示物のデザイン、イベント企画のアイデア出しなど、時間と手間がかかる業務を手助けする存在として注目されています。
生成AIには複数のモデルがあり、それぞれに得意とする作業があります(表参照)。業務内容に応じて使い分けるとよいでしょう。各サービスは基本的には無料で使用できますが、回数制限なしで使いたい、処理速度を向上させたい、安全性を高めたいといった場合は、施設や法人で有料プランを契約して使うのがおすすめです。
ChatGPT
文章作成や要約、アイデア出しを得意としています。会議資料の下書きや職員向けのお知らせ、行事の企画案づくりなど、さまざまな場面で使われています。人間と話しているかのような自然な会話ができるのも特徴です。
Microsoft Copilot
WordやExcelなどのソフトと連携しやすく、文書作成や表の整理、報告書の下書きといった事務作業を効率化してくれます。Microsoftの最新OS、Windows11にはデフォルトで搭載されています。
Gemini
Google検索の技術を基盤としているため、最新情報へのアクセス能力が高く、検索結果と組み合わせた回答を生成できます。調べ物の要点整理や説明文の作成が得意です。画像生成AIを使えばイラストや画像を作成することも可能です。

生成AIは便利なツールですが、事実とは異なる情報を生成したり、うっかり入力した機密情報を学習し外部へ流出させてしまったりするリスクも。生成AIを導入する前に、以下のようなルールやNG行為を施設全体で共有・確認しておきましょう。
生成AIに文章作成を指示する際は、利用者や家族が特定される情報は入力せず、内容を一般化して伝えましょう。
●避けたい指示の例
鈴木○○さん(85歳・要介護3・糖尿病あり)が、夕食時に食べ物を詰まらせた件について、家族向けの説明文を作ってください。
●望ましい指示の例
老健施設で、食事中に利用者が誤嚥しました。家族向けに状況説明と今後の対応を伝える文章を作ってください。
生成AIはもっともらしい文章を作りますが、事実と異なる内容が含まれる場合もあります。会議資料や掲示物などに使う場合は、必ず人の目でチェックし、必要に応じて修正を行いましょう。
生成AIは「考える作業を助ける存在」であり、業務上の判断や最終決定を行うものではありません。「頭の中にある考えややりたいことを一緒に形づくっていく相棒」として、あくまでも補助ツールとして位置づけ、活用しましょう。
生成AIが作った画像やイラストは、既存の表現や作品に似てしまうことがあります。著作権侵害のリスクを避けるため、外部向けの資料や広報物に使用する際は、画像検索などを行い、よく似た画像がないかチェックしましょう。

プロンプトとは、生成AIへの指示テキストのこと。あいまいな指示を避け、条件を具体的にするほど、より目的に合った結果が期待できます。①立場(誰の視点か)、②目的(何に使うか)、③対象(誰向けか)、④条件(分量・言葉づかいなど)を意識して伝えましょう。
プロンプトの書き方には、実はいくつかの形式があります。より使いこなしたいという方は、ぜひ調べてみて!
●目的 職員に感染対策の強化を周知したい
●コツ 専門用語を使わず、「誰向けか」「どの程度の分量か」を伝える
「老健施設の看護師の立場で、職員向けに感染対策の注意点をまとめた文章を作ってください。専門用語は使わず、A4・1枚程度でお願いします」
●目的 レクリエーションや行事のアイデアを出したい
●コツ 対象者の状態や条件を、大まかに伝える
「老健施設の介護職員として、身体的な負担が少ないレクリエーションのアイデアを5つ提案してください。集団で行える内容でお願いします」
●目的 リハビリ計画書を作るときの、長期・短期目標の案がほしい
●コツ 利用者の年齢・状態・希望などを「一般的な想定」として伝え、目標の案を引き出す
「老健施設で働くベテランの理学療法士として、一般的な利用者像を想定して答えてください。80代・女性・片麻痺があり、自宅復帰を希望しているケースです。この想定に基づき、リハビリ計画書に記載する長期目標1つと短期目標2つを提案してください」
●目的 プレゼンで使う資料の構成を考えたい
●コツ プレゼン時間を伝え、スライド枚数と情報量の目安を指定する
「老健施設の事務職の立場で、10分間の職員向け説明会に使うプレゼン資料の構成を考えてください。スライド枚数の目安、載せる内容のポイントを箇条書きで提案してください。文字は少なめで、要点がひと目で分かる構成にしてください」
【使用モデル】ChatGPT、NotebookLM、Canvaなど
ハルシネーション(事実に基づかない情報を生成すること)が起きづらいNotebookLMに、施設のマニュアルを読み込ませ、職員が質問するとマニュアルに基づいた答えが返ってくるようにしています。学習させた情報をもとにナレーション付き動画や、カードゲームのように楽しく学べる教材も生成し、新人研修や教育研修委員会の活動で使用しています。
研修の様子を録画し、YouTubeで限定公開しています。YouTubeには自動翻訳機能があり、それを使うことで、母国語で見直せるようにしているんです。また、見直しがしやすいように、ChatGPTでWebページを生成して、そこに動画を集約しています。後から確認しやすい環境が、外国人職員の安心感と理解度の向上につながっています。
例えば勉強会のアンケート集計では、回答内容を生成AIで分析することで、自分になかった視点に気づけるようになりました。次回の改善点を見つけたり、足りない部分を補うための対策を考えたりすることができています。また言語化が苦手だった職員が、生成AIとの会話で自分の考えを整理できるようになり、大会で発表した例もあります。
【使用モデル】ChatGPT、Gemini
議事録や議案書、施設をPRするポスター、勤務表作成など、「ケア以外の時間のかかる業務」に生成AIを活用しています。書類作成が苦手な職員も多いため、負担を減らす目的で導入しましたが、実際に軽減できています。書類作成に使っていた時間は入所者のケアや職員との面談に充てています。

利用者やご家族、職員の個人情報は入力しないよう徹底しています。また、生成された文章はそのまま使わず、漢字の読み方や言い回し、内容の妥当性を必ず確認します。その上で、必要に応じて上長にチェックしてもらっています。生成AIを使い始めた頃はいろいろと不安でしたが、0を1以上にしてくれることがわかり、今では頼れる相棒です。
当施設での使用モデルはいずれも無料プランですが、今後も業務で使っていくことになると思うので、法人として有料プランを契約しようと考えています。契約料が比較的安価なのも魅力ですね。昨年の10月時点で、当施設の生成AIの使用率は75%でしたが、今年度中に100%を目指し、さらなる業務効率化を図っていきたいです。
老健ほっかいどう vol.19/P4〜5
令和8年1月発行